「セクハラとは、人権の侵害。相手の意に反する強要があればセクハラですが、合意がない恋愛などあり得ない。セクハラと恋愛はまったく別物で、境界線などありません。セクハラを恐れて恋愛ができなくなることは本来ないはずなんです」

 二人の人間関係において、してはいけないことをしたり、言ってはいけないことを言ったりするのがハラスメント。過剰なしつこさや強要さえなければ、同僚を食事に誘うことがセクハラになることはないと金子さんは断言する。

「恋愛はキャッチボール、セクハラはドッジボール」と定義するのは評論家の勝部元気さんだ。

「セクハラはディスコミュニケーションによって起こる。相手がどう感じるかを考えず、自分の気持ちだけを押し付けようとするのがセクハラです。恋愛は、キャッチボールのように相手のことを考え、気遣いを忘れずに進めればいい。セクハラと恋愛は重なりません」

 とはいえ、気をつけるべきこともある。自営業のユウジさん(41)は、合コンで知り合った女性に頻繁にメッセージを送ったりデートに誘ったりし、幹事役の友人を通して抗議されたことがある。やんわりと断られていたことに気づかなかったという。

「当日はとても楽しく、LINEの連絡先も交換できました。メッセージを送ると短いながらもすぐに返ってくるので、お互いに好意があると思っていたのに」

 金子さんは、「NOのサインを見逃さないことが大切」と指摘する。

「恋愛とセクハラは本来別物ですが、好意があると勘違いしてしつこくアプローチし続けるのはセクハラになりえます」

ユウジさんのケースとは異なるが、職場の上司・部下の関係だったり、仕事上の取引があったりと上下関係に差がある場合は特に注意が必要だ。

「上下関係に差があると、断るにしてもはっきりとは断れない。例えば『どうしてもその日は都合がつかない』と断られたときに、本当に都合が悪いだけなのか、イヤなのに気を使ってそう答えているのかは推し量る必要があります」(金子さん)

(文中カタカナ名は仮名)(編集部・川口穣)

AERA 2018年7月30日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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