汗で粉じんマスクがしめり、ゴーグルがずれ落ちる。最初の10分が経過し、リーダーが休憩を指示するまでの間に、作業服から汗が絞り出せるほど、全身がぐちゃぐちゃとなった。スポーツ飲料を5本持ってきたが、飲んでも飲んでも、のどの渇きがとれない。10分の休憩では呼吸を整えるのがやっとだった。

 10分のサイクルを何度も繰り返していくと、当初はなんとか頑張れた作業がますます苦しくなってくる。5分の作業でもスタミナが続かず、スコップを握る腕は棒のようになり、マスクやゴーグルをしているのに目や口の中が粉じんでざらついた。それでも15人が作業を続け、約2時間で1階部分の土砂はほとんど取り除いた。雨水が再び流れ込まないように、家の周りに土囊を積み上げて、この日の作業は終了。予想を上回る過酷な作業に、10分ルールの重要性を身をもって知った。

 被災家屋の家主がボランティアたちにお礼を言うために来てくれた。すでに高齢の男性は気丈に振る舞っていたが、表情には疲労がはっきりと刻まれていた。事前の説明で促された被災住民との会話だったが、なんと言っていいのか、言葉が見つからない。「頑張ってください」というのも申し訳ない気がして、「お体に気をつけて」と一言絞り出すのがやっとだった。

 こうした被災住宅が坂町内の各所にあった。被災住民は、土砂などの片付けをしながら、夜は親戚宅や公設の避難場所に身を寄せているという。今後、仮設住宅などに入って、復旧から復興までの期間、これからの生活を見つめることになるが、将来の不安は大きく、メンタル面での対応も極めて重要になる。

 西日本豪雨災害で被害を受けたのは広島県だけではない。13府県で220人以上の死者を出し、いまも安否不明者の捜索は続いている。地元自治体や自衛隊、NPOなどの民間団体も復旧作業にあたっているが、被害が広域すぎて、復旧のメドは立たない。重機がなかなか入れない被災地域もある。圧倒的に数が不足しているボランティアも、平日はさらに集まりにくく、炎天下の作業時間は限られてしまう。復旧は長期化せざるを得ない状況なのだ。

 坂町のボランティアセンターの増田さんが言う。

「年内の復旧は、なかなか厳しい状況です。復興となれば数年はかかる。長い目で被災地を見つめてほしい。初めて来る人は、焦らなくていいので、今後数カ月の間に自分が来られる時に来てもらえればいい。すでに活動してくれた人も、自分がお手伝いした被災住民が1カ月後、2カ月後、どうなったのかを気に掛けてほしい」

 災害大国、日本。いつ自分が被災するかわからないほど、近年は災害が相次いでいる。ボランティア休暇を認めている企業や大学も増えている。他人事と思わず、ぜひ多くの人にボランティア活動に行ってほしいと思った。(AERA編集部・山本大輔)

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