広島駅から坂町へ続くJR呉線は土砂崩れで部分運休していた。そのため、広島駅からタクシーを使用。呉線運休の影響で、線路と並走する国道が大渋滞を起こし、坂町のボランティアセンターに到着した時には、既に午前11時を過ぎていた。

 センターではまず名前や住所、連絡先などを登録し、「ボランティア活動保険」への入会手続きを済ませた。その後、スタッフから簡単な注意点を説明される。最も印象に残ったことは次の二つだ。

・10分作業したら必ず10分休む。水分補給を頻繁にして、熱中症にかからないようにする。

・被災住民になるべく声をかける。会話になったら作業をやめてまでも優先する。それが被災住民の心のメンテナンスにつながる。

 説明を聞きながら違和感を覚えた。復旧作業の手伝いに来ているのに、作業時間が短すぎる。会話する暇があれば、作業を進めた方がいいのではないか。疑念が伝わったのか、スタッフが最後にこう付け加えた。

「今日も熱中症でボランティアが数人、体調を崩しました。みなさんが体調を壊したら意味がありません。復旧作業は長丁場です。今日できることを、できる範囲でして、残りは明日、別の人が引き継ぐ。全てを1人で終わらすのは不可能なので、無理は絶対にしないでください」

 この時間帯に集まったボランティアは5人。それが一つの作業チームとなった。筆者以外の4人は全員、広島市内や近辺から来た地元住民。うち3人はボランティア初体験だった。平日はボランティアの数が激減すると聞いて、夜勤前に作業をしにきた人。被災した親戚の家の片付けが終わったので、ボランティアに来たという人。様々な思いやりの気持ちが、初のボランティア活動に駆り立てていた。

 ボランティアセンターで活動を監督するスタッフの増田勇希さん(38)によると、今回の豪雨災害で坂町に集まってくるボランティアの特徴は、初心者が圧倒的に多いこと。毎日7~8割が初体験者だという。

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側面の壁がそっくり消え、大きな穴が…