AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
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■いま観るシネマ
タイトルは「性差を超えた戦い」の意味。1973年、男女の賞金格差に異を唱えて全米テニス協会の試合をボイコットした女子テニスチャンピオン、ビリー・ジーン・キングと、元男子チャンピオン、ボビー・リッグスによる“テニス対決”を描いた作品だ。男女の賃金格差やLGBTなど、45年前の物語に驚くほど今日的な問題が詰まっている。夫婦監督であるヴァレリー・ファリス(59)&ジョナサン・デイトン(61)は話す。
「映画制作がスタートしたのは米大統領選の最中で、私たちは当然ヒラリーが勝つと思っていた。だからこの歴史的なストーリーを女性への“祝福”と考えていたの。でも大統領選の結果はご存じのとおり。#MeTooも起こって、結果『状況はあまり変わっていない』という警告になってしまった」(ヴァレリー)
現在74歳のビリー・ジーン・キングは社会活動家としても知られている。81年にレズビアンであることを告白。映画は彼女の私生活における闘いも描いている。
「本人からも『その部分をしっかり描いて』と要望があったの。『セクシュアリティーで悩む若い人はまだたくさんいる。“本当の自分”を見せていいのだ、という励ましになってもらえれば』と言っていたわ。彼女はあらゆるものは平等だという意思を持って活動をし続けている。本当に素晴らしい人よ」(ヴァレリー)
テーマは社会派だが、映画はユーモアに溢れてもいる。
「この映画はボビーを悪人とは描いていない。彼はあえて女性を怒らせるような行動を取って注目を浴びることを楽しんでいた。なによりボビーとビリー・ジーンは互いに尊敬しあっていた。当時よりセクシュアリティーの問題はオープンになったし、男女格差で進歩した面もある。ただ、期待したほどではない、ということなんだ」(ジョナサン)