対象となる大学は有識者の書類審査を経て、大学教授ら11人でつくる「事業委員会」が非公開の会議で選定する。委員の一人は「採択される十分なレベルのもので、圧力や裏話などはまったくなかった」と話した。

 東京医科大の関係者も、

「1年目の申請書は内容うんぬんではなく、書式に明らかな穴があった。当大はロボットの手術件数の実績などは高く、提案の内容もよく、普通に出せば採択されたはずだ。便宜を図ってもらう必要などあったのか」

 として、首をかしげる。そして臼井理事長をこう評した。

「みんなに気配りができる村の村長みたいな人。人間味があり過ぎる。裏口入学の件は酒でも飲みながら、『いいよ、いいよ』と受け入れたのかもしれない」

 佐野容疑者は早稲田大学大学院の理工学研究科を修了後、旧科学技術庁に入庁。近年は官房長などの中枢ポストを担い、出身地の山梨県では知事選の候補者にも浮上した。

「野心家で、上には腰が低く、下には厳しいタイプ。将来の次官候補だった」(文科省幹部)

 ただ、次官候補とはいえ、公私の区別はつかなかったようだ。事件の一報を受け、文科省のある課の幹部はこう漏らした。

「一度、文科省を解体しないと今の体制では駄目だ」

 ある中堅職員はこう話す。

「仮に高等教育局が忖度して助成金を動かしていたとすれば、組織としては終わっている」

 逮捕された日はくしくも学生の官庁訪問の初日。霞が関の就活スタートだ。ただでさえ、森友・加計学園問題でイメージが悪化し、優秀な人材を集められるか不安になっていた中堅職員が嘆く。

「これで本当に誰もこない」

(編集部・澤田晃宏)

AERA 2018年7月16日号