5日の帰国会見。チームを率いた西野監督は契約が満了になる7月末で退任する (c)朝日新聞社
5日の帰国会見。チームを率いた西野監督は契約が満了になる7月末で退任する (c)朝日新聞社

 ブラジル大会で惨敗した後、「日本らしいサッカー」では勝てないとの論調が高まり、ハリルホジッチ前監督は、「速さ」や「強さ」を求めた。しかし、そういった要素をこれまで築いてきたものの上に積み上げるはずが、前監督はサッカー観の違いもあって、そればかりを強調し過ぎてしまった。

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 例えばハリルホジッチは「デュエル(1対1の戦い)」を強調してきたが、今大会で日本代表は、攻撃においてボールを動かして複数の選手が関わり、1対1を避けるプレーで相手を混乱させ、最後の局面では乾貴士や香川真司が個人の技術とアイデアで勝負してチャンスをつくった。守備においても、2人、3人で囲い込んでボールを奪うことができた。

 もちろん1対1に勝つことは重要だが、勝てないのなら1対2、1対3にすればいい。そういった判断を日本人の監督が示し、日本人の選手たちが実践した。つまり日本がこれまで目指してきたやり方でも世界に対抗できることを示したのだ。

 ワールドカップは結果ももちろん大事だが、その国のサッカーがどういったものなのか、どこまでのレベルにあるのかを示す舞台でもあると個人的には思っている。日本が今回示したプレーはまさに、世界の強豪を相手にしてもしっかりボールをコントロールしてパスをつなぎ、緩急の変化をつけてゴールに迫るプレーだった。さらに言えば、フェアプレーの面においても、日本は他チームに見られたあからさまな反則や、相手選手にケガをさせかねないプレーなどはなく、あくまでスポーツとしてのサッカーをプレーした。日本が目指す方向性が改めて確認できたと言っていいだろう。

 日本代表の新監督について、早くもさまざまな臆測が飛び交っているようだが、日本サッカー協会(JFA)は、方向性を見失ってはならない。あくまで日本サッカーの持つ、技術力、組織力、俊敏性といった要素をベースとしたチームづくりに見合った人選が必要だ。

 今回日本人監督がその力量を示したことを考えれば、コミュニケーションの問題も含めて外国人を探す必要があるのか疑問だ。仮に外国人を選ぶにしても、日本サッカーをある程度理解している人物が相応(ふさわ)しい。例えばザッケローニに再び任せる手はある。ブラジルでの結果は惨憺たるものだったが、少なくとも日本が目指すべき方向性でチーム力を高めたことは確かだ。

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