「決済の仕組みは調整中ですが、クレジットカードか電子マネーのシステムを使用できるようにすると聞いています。実店舗やネットショップなど、全国どこでも使えるカードを目指しています。また、タバコなど、子どもに有害なものを購入できなくする仕組みも検討中です」

 家族間での少額のやり取りに使いやすいよう、送金にかかる時間はわずか3~6秒、1送金当たりの手数料も0.01ドル(約1.1円)以下に設定される予定。両親が「はい、どうぞ」と100円玉を子どもに手渡すのとほぼ同じ行為が、キャッシュレスになる。外国に住んでいる祖父母や親戚から子どもに送る場合も、同じ時間・手数料で送金可能だ。

 サービスに使用するのは、ウォロ(Wоllо)と呼ばれる新しい仮想通貨。実際の仮想通貨交換所に上場され、取引される。すでに、取扱量で世界最大規模といわれる交換業者BITFINEXで取引されることが内定した。ほかの交換業者とも交渉中だ。ビットコインのニュースに代表されるように、昨今の仮想通貨事情を考えると激しい値動きが不安だが、流通量を抑えることで投機目的の売買を防ぎ、乱高下しない通貨を目指すという。

 この仕組みを開発したのは、英国の起業家フィリッポ・ヤコブ氏らを中心としたグループ。4月に来日したヤコブさんはこう話した。

「ピグズビーは、お金を貯めること・使うことを自然と学べるおもちゃ。21世紀型のお金のルールを身につけられるんだ」

 ピグズビーのキットは、一定額分のウォロ込みの販売となる。日本での価格はまだ決まっていないが、本国では60ドル(約6500円)程度の予定。まずは世界で100万セットの販売が目標だ。

 ヨーロッパでは「お小遣いもキャッシュレス」な家庭が増えつつあるようだが、日本はまだまだ「現金主義」社会。ピグズビーは日本の家庭へどれくらい浸透するのだろうか。(編集部・川口穣、ライター・田茂井治)

AERA 2018年7月9日号

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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