メディアが報じない本当の実態(※写真はイメージ)
メディアが報じない本当の実態(※写真はイメージ)

 政府の統計からも支援策からも漏れていた「大人のひきこもり」。そこから立ち直った当事者たちが集い、語り合う場がある。生きづらさを抱える人々を見つめてきた作家・萱野 葵氏が報告する。

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 本誌4月23日号に、私の知人二人のエピソードをもとに、「大人のひきこもり」の話を書いた。

 その際、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)など、ひきこもりに関する著書を数多く出している池上正樹さんに話を聞いた。そして、ひきこもり当事者の会を紹介していただいた。「庵(いおり)-IORI-」という会である。庵は偶数月の第1日曜日に開催されている。

 私は2月4日に東京都内で行われた集いに参加させてもらった。ここには当事者や家族だけでなく、ひきこもりに関心のある人も来ていた。

 その日の会場は、どこにでもある公民館の会議室だった。机を移動し、いくつかのグループに分ける。庵ではいつも議題が決まっていて、分科会に分かれて参加者が話し合う。

 私は「社会的監禁について」という分科会に入れてもらうことにした。昨年12月末に大阪府寝屋川市で起きた、両親が娘を自宅に監禁して死亡させたとされる事件をテーマにした討論会だ。

 10人ほどのグループになった元当事者や母親などが、一人ずつ順繰りに発言する。話は次第に寝屋川の事件からそれ、自分たちの経験談へと移っていく。私は何も言うことがなかったので、黙って彼らの話に耳を傾けていた。

●国谷裕子キャスター似の美女が語った仰天体験

 司会者は14歳から26歳までひきこもりだったという男性だ。彼はとても愛想がよく腰が低かった。いじめを受けた自らの中学時代や環境を「悪魔」「牢獄」と称して憎んではいたが、それでも、もうわだかまりはないかのように明るくしゃべっていた。実際彼は、今は週に4日就労していて、自活し、自分で生計を立てている。「4月からは放送大学で勉強する」と話していた。

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