日本時間の未明から始まったPVにもかかわらず、400人は入るであろう大教室は立ち見が出るほど超満員。地球の裏側で奮闘する仲間や先輩たちに送られた大迫力の拍手と声援の中、私たち地元メディアも一緒に興奮したあの日の光景は、今でも脳裏に焼き付いています。

 なぜ強いのか。選手たちが日々厳しい練習を繰り返す大学の体育館から徒歩5分ほどの場所に、生活の拠点であるレスリング部女子寮があり、私は「潜入取材」をしたことがあります。選手たちが一人の女子大生に戻れるその空間で、食事など身の回りの世話をしてくれる寮母さんの言葉を紹介します。

「20人分ぐらいの食事を作るのですが、その食材のほとんどが、彼女たちを応援してくれている全国の食品業者の方からの差し入れで賄えてしまう。こんな恵まれた状況になったのは、やはり最初に吉田沙保里選手が活躍してくれたおかげ。至学館大学(当時は中京女子大学)の名前を全国的に有名にしてくれた。今でも沙保里さんは後輩たちとも分け隔てなくフランクに接してくれるけど、みんなにとって間違いなく『神』です」

 同大学学生数は1355人(18年5月1日現在)。首都圏のスポーツ強豪大学と比べると桁違いに少ない。だからこそ実現できるアットホームな校風が、学生同士の距離を縮めていく。学生や大学関係者にとって、世界で戦う吉田選手のようなオリンピアンであっても「私の同級生、私の先輩」という思いが芽生え、首都圏のマンモス大学にはない濃厚な応援が生まれます。それが、選手たちの勝利への原動力になっていると強く感じました。

 レスリング界において吉田選手は神、カリスマなんですけど、日常生活では、とても後輩思いで、すごく気を許す。後輩たちは憧れの吉田選手の生き様を学びながら、一緒に練習もして、強くなってきたんです。

 最近、色々と問題が報じられたレスリング界ではありますが、選手たちは、どんな瞬間でも日々頂点を目指して鍛え続けているんです。そんな選手たちの姿や明るい未来にこそ目を向けて、これからもナゴヤ人として応援し続けたいと思っています。(メ~テレアナウンサー・倉橋友和)

AERA 6月25日号より抜粋