2017年1月の大統領就任以降、トランプ氏にとって非常に大きな試練が11月6日にやってくる。与党・共和党が上下両院で多数を握る米議会の中間選挙だが、トランプ氏の低支持率もあって、現時点では野党・民主党に勢いがあると報じられている。形勢逆転には、共和党の大統領であるトランプ氏が有権者に誇れる輝かしい功績がのどから手が出るほどほしい。

 その功績として手が届きそうなのが、北朝鮮の完全非核化を経て実現を目指す朝鮮戦争(1950~53年)の終結なのだ。だからこそ、米国優先主義のトランプ氏が朝鮮半島和平に積極的にかかわろうとする。53年に米朝中が合意した休戦協定以降、約65年もの間、南北を分断したまま冷戦時代の遺物となっている朝鮮戦争だけに、終結に導くことができれば、歴史に名を刻む、誇るべき偉業となる。

 10月5日には、ノーベル平和賞の発表もある。それまでに朝鮮戦争終結を形にできれば、トランプ氏の受賞も現実味を帯びてくる。中間選挙1カ月前という絶好なタイミングでの受賞発表になるのだ。

 中間選挙まで約5カ月。朝鮮半島和平を実現するには、早く事態を動かす必要があった。今回の米朝首脳会談は、自らの功績に向けたプロセスを始めるための重要な政治イベントであり、合意内容が乏しいと事前に分かっていても、早期に実施することに意味があった。「ディール(取引)」に自信があるトランプ氏だからこそ、相手の最高指導者と会うことで、事態を急速に動かせると判断したとみられる。(編集部・山本大輔)

AERA 2018年6月25日号より抜粋