初心者にもやさしい、ライシテ論争史(※写真はイメージ)
初心者にもやさしい、ライシテ論争史(※写真はイメージ)

 伊達聖伸の新書『ライシテから読む 現代フランス 政治と宗教のいま』は、フランスの政治と宗教を分離する「ライシテ」についてつづった一冊。同書の魅力を、リブロの書店員・野上由人さんは次のように寄せる。

*  *  *

 宗教対立から戦争、政争を繰り返した歴史を踏まえ、「公」と「私」を厳格に峻別するフランスでは、国家の領域に信仰が侵入することを認めない。この原理を「ライシテ」と呼ぶ。私的領域での信仰の自由とともに、公的領域における平等を保障する。

 日本国憲法も20条で信教の自由と政教分離を定めている。その点では、日本もライシテ体制の国である。しかし、社会における関心度が違う。フランスではいつの時代もライシテを巡る論争が絶えない。古くは国家権力とカトリック教会の対立、現代ではイスラム教の包摂が主な焦点だ。

 本書は『ライシテ、道徳、宗教学』でサントリー学芸賞を受賞した研究者による初めての新書で、ライシテ論争史をまとめたもの。論争のきっかけとなる事件や人物の解説から入るので、初学者にもやさしい。

AERA 6月18日号