事業構成はこれだけ変わった(AERA 2018年6月18日号より)
事業構成はこれだけ変わった(AERA 2018年6月18日号より)

 家電事業が中国企業に押されるなか、創業100年を迎えたパナソニック。すでに次の100年を見据えて、様々な取り組みを始めている。

 パナソニックは、なんの会社なのか。

「正直言って、私も自問自答をしている」

 2018年1月、米ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市の会場。筆者が投げかけた質問に、パナソニックの津賀一宏社長はゆっくりとした口調でそう答えた。半年を経過したいまも同じだ。

 パナソニックといえば家電。08年の社名変更の前、松下電器産業の時代からの代名詞として多くの人が描く姿だ。国内家電市場では27.5%とトップシェアを誇り、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、テレビのほか、調理家電や理美容家電、空質関連商品など、他社の追随を許さないラインアップの広さを誇る。

 パナソニックと同様に家電で長年の歴史を持つ東芝は積極的な成長戦略を描き、経営トップの号令による利益至上主義の重圧がのしかかった。パナソニックが12、13年度に連続した7千億円超という純損失に耐えてリストラに踏み切った半面、東芝は赤字を恐れて粉飾決算に手を染めた。米原子力事業での巨額損失も重なり、家電事業を中国企業に売却することになった。

 パナソニックで家電などを手がける社内カンパニー、アプライアンス社の本間哲朗社長いわく、「いまや国内唯一の総合家電メーカー」という立場にある。

 だが、業績の面からみると、もはや家電メーカーではない。自動車関連事業こそ、中期的な成長の柱だとみられている。クルマの電動化や自動運転化によって、ビジネスチャンスが大きく広がっているのが要因だ。

 冒頭で触れた家電見本市でも、5年前から家電は主力の展示ではなくなっている。17年秋に千葉・幕張で開催された国内最大の家電見本市では家電の展示を一切しなかった。

 比率を伸ばした領域はB2Bと言われ、企業との直接取引によるビジネスだ。家電のように個人に販売するB2Cとはスタイルが異なる。パナソニックはB2Bの企業である。この表現のほうが、いまは正しい。

 だが、津賀社長は自問自答し続けている。

「世の中の変化をみると、何かひとつの事業だけで、次の100年は生き残れない。事業の再スタートを切るという気持ちで臨まないと、次の100年どころか10年、20年先すら生き残れないという危機感がある」

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