「自分を役の中に“投げ込む”」13歳の歌舞伎役者・市川染五郎の覚悟 (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「自分を役の中に“投げ込む”」13歳の歌舞伎役者・市川染五郎の覚悟

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市岡ひかりAERA

 梨園に生まれ、4歳で自分の道を決めた。息を吸うように自然に舞台に立ち、勉強も、遊びも、すべてを芸に変えていく。まっすぐに歌舞伎の道だけを見つめるその瞳は、ぞくっとするほど美しかった。

*  *  *
「歌舞伎、やりますか?」

 父の松本幸四郎にそう聞かれ、「はい」と頷いたのは4歳の時。初舞台「門出祝寿連獅子」で、見事な「毛振り」を披露し、観客を魅了した。ただ、市川染五郎、当の本人は、

「全然、覚えていないんです。お客さんが怖かった、っていうことくらい」

 と、こともなげに振り返る。言葉も十分に話せないような幼児期から、大人用のマフラーを振り回し毛振りの真似をして遊んでいた。生まれた時から当たり前のようにそばにあった歌舞伎の世界。「遊びが学びになる」という、祖父・松本白鸚の言葉を体現するように、楽しみながら一歩一歩、歌舞伎役者の階段を上っていく。

 今年1月、12歳で八代目市川染五郎を襲名した。父・幸四郎が37年間にわたり名乗ってきた名前だ。

「生まれた時から染五郎は父だったので、最初は不思議な感じでした。でも、染五郎は自分なんだ、と知ってもらいたいと思っています。高麗屋は新しいことに挑戦する家なので、その伝統を受け継ぎながら、自分なりの染五郎になりたい」

 襲名披露公演では、高麗屋の伝統ある演目「勧進帳」で源義経役を演じた。その時、白鸚からこう教えられたという。

「芝居は気持ちでやるもんだ」

 以来、この言葉を胸に刻んで舞台に立つ。染五郎は言う。

「感覚として、自分をその役の中に“投げ込む”ことを意識しています。染五郎が義経を演じるんじゃなく、義経になる。父の舞台を見ていても、その役が何を考えているのかが見ていて分かる。気持ちで演じるっていうのはそういうことなんだなって分かります」

 事細かに教えられずとも、祖父や父の姿を見て、自ら学び、考え、吸収する。また新たな成長の場になったのが、6月にシネマ歌舞伎としても公開される「東海道中膝栗毛 歌舞伎座捕物帖」。幸四郎演じる弥次郎兵衛と、市川猿之助演じる喜多八が繰り広げる珍道中、いわゆる「弥次喜多」を描いたシリーズ2作目だ。脚本・演出をスーパー歌舞伎II「ワンピース」などを手がける猿之助が務め、宙をダイナミックに舞ったり、観客の拍手の大きさによってストーリーが変化したり……といった従来の歌舞伎のイメージを覆す大胆な演出も光る。


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