1階の奥、中2階から2階、写真左にあるように1階と2階をじかにつなぐものと、三つの階段がこの店の不思議な浮遊感を生み出していた(撮影/岡田晃奈)
1階の奥、中2階から2階、写真左にあるように1階と2階をじかにつなぐものと、三つの階段がこの店の不思議な浮遊感を生み出していた(撮影/岡田晃奈)
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 本好き、書店好きのあいだに大きな衝撃が走った。青山ブックセンター(ABC)六本木店が6月25日を最後に消える……。

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 悲しみも麻痺するくらい、書店の閉店は日常になったが、今回のダメージは大きすぎる。トントンと小気味よく階段を上がっていくあの特異な3階構造。いわゆるセレクト書店のはしりともいえる考え抜かれた棚。東日本大震災が発生するまでは早朝5時まで営業していた安心感。それが失われるというのだ。

「行かない日はなかった」と批評家の佐々木敦さんは言う。

「1986年から4年間、映画館のシネヴィヴァン六本木に勤めていました。20代前半の私にはバブル絶頂期の六本木に居場所なんかなくて、職場から徒歩20秒のABCだけが頼り。毎日新刊書の棚をチェックし、新しい本と出合いました。大学の授業にほとんど行かなかった私には、ABCこそが学校でした」

「入り口を入ってすぐ左の階段を上がると、海外の写真集が充実していましたね」と振り返るのは、映画批評家で編集者の高崎俊夫さん。「コンパクトなウォーカー・エヴァンスの写真集を買った記憶があります」

 2004年には取次会社の破産申し立てで営業中止に追い込まれ、ファンによる営業再開に向けた署名運動が巻き起こるなど、異例の経験もしている。その際、運動の中心にいた翻訳家の柴田元幸さんと、「文學界」で騒動について鼎談した元店員の柳瀬徹さんにも語っていただこう。

「のちに“文脈棚”と言われるような、本と本の連関性を重視する並べ方は、“誰に言われるでもなく当然やる”というノリが共有されていた気がします。書店員のこれ見よがしの自己表現ではなく、売りたいものを強調はするけれども商品とお客さんの間の快適さを損なってはいけないと、無言で教わったところが大きかったです」

 今回の件を、書店側は「閉店」ではなく「統合」と発表している。山?加奈店長に聞いた。

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