今春、最も話題となったドラマ「おっさんずラブ」が、今週最終回を迎える。男性同士の恋愛ドラマが、なぜこんなにも私たちの心をつかんだのか。
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「おっさんずラブ」(略してOL、テレビ朝日系)の最終回を前に、ネットでは「これから何を支えに生きれば?」「(最終日が)仏滅なんですけど」など、OLロスを嘆く声に溢れている。2カ月間、OLと共に生きてきた女性たち。吉田鋼太郎演じる部長のインスタグラムのフォロワーは40万人を超え、#おっさんずラブのツイートは20万以上、主人公の服や持ち物は特定され、あっという間に完売する。ドラマの世界とSNSとリアルワールドが交差するように、OLは社会現象になっているのだ。
物語はタイトル通りの、男たちの恋愛ドラマ。30代会社員の春田(田中圭)が、尊敬する部長に告白され、同時に後輩の牧(林遣都)からもキスされるのが初回放送という展開の速さに加え、「巨根じゃだめですか」(牧)、「お前がおれをシンデレラにした」(部長)など、耳を疑いつつニマニマしちゃう自由な脚本に心つかまれてしまう。しかも同性愛は主題でなく、あくまで、運命の恋って?を問いかける、王道のラブコメだ。
原作のないドラマをゼロから企画したのは、テレビ朝日プロデューサーの貴島彩理(28)。そもそも男性同士の恋愛にこだわったわけではない。働くアラサー女性にとって、理想の結婚相手は家事が得意な執事のような男性だったりする。でもその条件は男も同じかも。だったら、そもそも、女同士じゃだめ? そんな素朴な疑問がはじまりだった。プロデューサーは全員女性。意図したわけではないが、夫婦の愚痴や合コンの失敗など、女性の会話がドラマには生かされている。「男同士はこう」といった視線はなく、あくまでも「私たち」の恋バナだ。
それでも、制作者側も驚く想定外の視聴者の反響は、男と男の物語だったからなのは、事実だろう。女と女、女と男では全く違う物語になる。なぜなら、それがジェンダーというものだから。ジェンダーはコインの裏表のように単純にひっくり返せないもの。男性同士の愛の方が安心して熱狂できる女性の現実は、この国のジェンダー規範の厳しさの表れなのかもしれない。