小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
候補者男女均等法案は全会一致で可決された (c)朝日新聞社
候補者男女均等法案は全会一致で可決された (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【写真】候補者男女均等法案は全会一致で可決された

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 目の前の景色から、男性を消してみたら。あなたの周りにはどれくらい人が残りますか?

 イギリスの雑誌「ELLE UK」が作った、社会に女性のリーダーを増やすためのキャンペーン#MoreWomenの動画。議会から男性が消えると、議場はガラガラに。テレビ画面でも、国際会議でも、男性が消えると数少ない女性がポツンと残されます。つまり、女性のための席がもっとあっていいよね、というメッセージです。

 日本はどうでしょう。あなたが今週出席した会議に、女性が何人いたか思い出してみて。「自分だけだった!」なんて人も少なくないはず。いまの職場に女性が増えて、幹部の半分が女性だったらと想像してみてください。ライバルが増えそうで不安? 仲間が増えそうで心強い?

 社会学者の千田有紀さんは、組織の男女の割合が半々になると、人は性別の違いではなく個人の意見の違いに注目するようになると言います。これが8対2ぐらいの割合だと、女性は2割の少数者としてひとかたまりでとらえられてしまい、何を言っても「マイノリティーの女性の意見」という扱われ方をされがちです。

 女性だって、考え方や立場はいろいろですよね。意見の違う人がいるのは当たり前。メディアでごく一部の人の発言が「女性の意見」「主婦の意見」と言われてしまうのを見ると、ひとまとめにしないで、と歯がゆい思いがします。

 このほど成立した候補者男女均等法は、そんな世の中を変えるかもしれません。議会を男女均等(パリテ)にと頑張ってきた超党派の議員たちの努力が実りました。国会議員の9割弱は男性。今後、各政党は女性候補者を増やすべく努力しなくてはなりません。罰則はないものの、何もしなければ、男女平等に無関心な党だと示すようなもの。財務事務次官のセクハラ事件に揺れる中で、この法案が成立したことには象徴的な意味を感じます。議場や会社やテレビ画面の中で、もっとたくさんの多種多様な女性たちが自由に意見を言えるようになりますように。

AERA 6月4日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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