稲垣えみ子「冷蔵庫を手放して広がった『おいしいの定義』」 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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稲垣えみ子「冷蔵庫を手放して広がった『おいしいの定義』」

連載「アフロ画報」

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稲垣えみ子AERA#稲垣えみ子
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行

おからで漬物ができるって知ってました? 冷蔵庫がない時代のワザ。はまっております(写真・本人提供)

おからで漬物ができるって知ってました? 冷蔵庫がない時代のワザ。はまっております(写真・本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【稲垣さんがハマっている、おからの漬物の写真はこちら】

*  *  *
 先週のコラムで「ノー冷蔵庫ライフ」の快適さを書いたところ、担当デスク(男性)から「週末につくったローストビーフやら焼き豚やらをたんまり冷蔵庫に入れておくのが幸せな僕には、冷蔵庫を捨てるのはかなりハードルが高いです」とのメール。なるほど料理男子なんですね! さすがはアエラのデスク。

 もちろん冷蔵庫はあったっていいんです。でもなくたっていい。しかし「ある」ことが正常で「ない」ことは異常と当然のように言われ続けているとそれはなぜかと考えざるをえず、で、デスク様のコメントを見てひざを打ちました。

 結局は「おいしいもの」を食べたいかどうかということなんじゃないでしょうか。冷蔵庫がないとそれが食べられないじゃんと。確かに冷蔵庫をなくすと作り置きしたくなるような凝った料理はできません。肉なら焼くとかナベとかしかできない。つまりは冷蔵庫のなかった江戸時代みたいな食事(めし・汁・漬物)を繰り返すことになる。えーそんなのつまらない耐えられないってなると、ノー冷蔵庫なんてありえない~……と。

 しかし、かつてローストビーフ的ごちそうを食べまくっていた私ですが、冷蔵庫をやめた今、ひたすら粗食に耐えてストイックに暮らしているかというと全然そんなことはない。むしろ年のせいか粗食がしみじみおいしい。つまり私は「おいしい」の定義を大幅に広げたのです。玄米ご飯に大根おろしをのっけてクウウと幸せをかみ締めてるんですから、幸せってなんて簡単なんでしょう。

 で、実はそれは特別なことでもなんでもなくて、「人生最後の食事は何を食べたいか」と聞かれて「ローストビーフ!」と答える人は案外少ないんですよね。炊きたてご飯とか卵焼きとか、そういう素朴なものを挙げる人が多い。つまりはそれがその人にとって究極の「おいしい」ものなんだと思うのです。ローストビーフがおいしいって実は「世間のお約束」だったりする。まあおいしいけどね。でも美味とはそれだけじゃない。どうですかねデスク。

AERA 2018年5月28日号


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稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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