流産や死産…経験者が明かす「一番つらかった」時期とは(※写真はイメージ)
流産や死産…経験者が明かす「一番つらかった」時期とは(※写真はイメージ)

 多くの人は、妊娠がわかると、赤ちゃんが新たに加わる家族の未来をあれこれと思い描く。その明るい未来に、「誕生」とは正反対の「赤ちゃんの死」が待っていようとは想像もしないだろう。我が子と家族の幸せな未来を描いていた親たちは、赤ちゃんの死という残酷な現実を突きつけられ、自責の念や不条理な怒りを抱え、深い暗闇の奥底に沈んでいく……。

 死別による心身の反応を「悲嘆(グリーフ)」というが、研究によって、悲嘆がどのようなプロセスをたどるのかがわかってきた。書籍『産声のない天使たち』に掲載された、「悲嘆のプロセス」を紹介したい。大切な存在を失った人が、どのように悲しみと向き合っていくのか、そのプロセスを知ることは、グリーフケアにおいて大切なことだからだ。

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 流産や死産後、産後休暇などで自宅にいることの多い女性にとって、夫が仕事に行き、日中ひとりでいる時間は、自分だけが取り残されたような孤独感が襲ってくる。聖路加国際大学の蛭田明子助教が、学術振興会科学研究費の助成を受けて製作した「流産・死産・新生児死亡で赤ちゃんを亡くされたご両親へ」というリーフレットにも、「パートナーが仕事に戻り始める頃が一番つらかったと言う人も少なくありません」とある。

 産後の母親、父親には通常、自治体の保健師らによる新生児訪問指導がある。母子保健法で定められた事業で、生後28日以内(里帰り出産の場合は60日以内)に自治体の保健師や助産師が自宅を訪問する。また、生後4カ月を迎える日までの赤ちゃんがいるすべての家庭に向けて、母子保健推進員や児童委員らが訪問する「乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)」もあり、育児不安や悩みを相談することができる。こちらは児童福祉法に基づいた事業だ。

 ただ、こういった訪問は赤ちゃんが亡くなっている場合は受けられない。赤ちゃんを亡くした親たちは、相談する機関もない。そもそも産後の女性はホルモンバランスが乱れ、うつになりやすい。その中でも、赤ちゃんの死という大きな悲しみを抱える女性たちが、何のケアも受けられずに、孤立してしまっているのが現実だ。

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