Bさん夫婦は、この件について教育委員会にも相談した。当初は「PTA活動は各校長に任せている」と突き放されたが、粘り強く電話で働きかけ、非会員でも子どもが差別されないという原則を確認した。「誰もが無理やり強制される」PTAではなく、「それぞれの事情に合わせて自発的に参加できる」PTAにすべきだと思っている。

 共働きが増え、男性の参加率も上がったことで、専業主婦の牙城だったPTAの現場の様子も変わりつつある。

 昨年の春、都内のある区立中学校のPTA役員会で歓声があがった。

「ついにガラケーの人が一人もいなくなった。これでLINEグループで連絡できる」

 このPTAで副会長を務めるWebディレクターのCさん(52)は、連絡手段をLINEに一本化できたことで、作業量が格段に減ったと話す。Cさんはこれまでも、ITの力で省力化の試みをしてきた。小学校でPTA会長をやったときは、会議室の空き時間を自宅からでも確認できるよう、Googleカレンダーを導入。役員が学校に足を運ぶ回数を半分程度に減らすことができた。

「IT化でPTAの仕事は今の8分の1くらいにできますが、保護者のスキルはバラバラ。パソコンを使える人は半分程度ですから、無理はしません」

 最初のうちは、パソコンやスマホの操作を他の役員に教えるのに時間がかかったが、だんだんと参加者のスキルも上がってきているという。

 都内の公立小学校でPTA副会長を務めるDさん(42)もデジタル化を進めてきた。

「去年は区役所から届く手紙類を共有するのにGoogleフォトを導入しました。それまではみんな忙しいなか、いちいち学校に手紙を取りに行っていたので、担当者がまとめて写メを撮ってアップするようにしたんです。スムーズに進み、全方位からすごく感謝されました」

 DさんのPTAも連絡手段はLINEが中心だ。メンバーの忙しさを考慮して、「既読スルー」を推奨。会長がお知らせを送信する時は「返信不要」と添えるようにしているという。

 共働きが増えた今、かつてのような非効率なPTAではますます敬遠する人が増えるのは間違いないだろう。PTAにもダイバーシティーを取り入れることで、効率的で有意義な活動に変わるはずだ。(ライター・大塚玲子)

AERA 2018年4月30日-5月7日合併号より抜粋