アクロバティックなシーンに会場から拍手が湧く。演者と観客一体となって作るショーだ(撮影/写真部・小原雄輝)
アクロバティックなシーンに会場から拍手が湧く。演者と観客一体となって作るショーだ(撮影/写真部・小原雄輝)
「コントーション」。人間離れした柔軟性をもつ女性たちが舞う。深海生物をモチーフにした衣装に身を包み、妖艶に動く(撮影/写真部・小原雄輝)
「コントーション」。人間離れした柔軟性をもつ女性たちが舞う。深海生物をモチーフにした衣装に身を包み、妖艶に動く(撮影/写真部・小原雄輝)
クララ役の池田一葉さん(中央)。「ストーリーの予習をしてもしなくても楽しめるので、騙されたと思って見てみてほしいです」(撮影/写真部・小原雄輝)
クララ役の池田一葉さん(中央)。「ストーリーの予習をしてもしなくても楽しめるので、騙されたと思って見てみてほしいです」(撮影/写真部・小原雄輝)
脚本家・演出家のミシェル・ラプリーズさん。カナダ生まれ。すでに次作に取り組み中と言う(撮影/写真部・小原雄輝)
脚本家・演出家のミシェル・ラプリーズさん。カナダ生まれ。すでに次作に取り組み中と言う(撮影/写真部・小原雄輝)

 あの夢幻世界が帰ってきた。シルク・ドゥ・ソレイユ「キュリオス」。19世紀に欧州の貴族が集めたルネサンス期の骨董(こっとう)品たちに命が宿る。

【写真】人間離れした柔軟性をもつ女性たちはこちら

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 ツイッターやインスタグラムに投稿される「#シルクドゥソレイユ」の写真や動画の数々には、「感動」「感激」「ドキドキ」といった言葉が躍る。

 今年2月から日本でツアー中の「KURIOS(キュリオス)」。「シルク」来日公演の14作目となる今作では、観客にフィナーレの撮影を解禁した。SNS時代に合わせた初の試みだ。

 エンターテインメント集団「Cirque du Soleil(シルク ドゥ ソレイユ)」は、1984年にカナダ・ケベック州で生まれた。これまで「サルティンバンコ」「アレグリア」「キダム」などの作品を世界450以上の都市で上演し、延べ1億8千万人以上を動員してきた。来日公演は92年の「ファシナシオン」が初。

 ファン歴10年以上という神奈川県に住む40代の会社員男性は、早速「キュリオス」も家族で観賞し、期待を裏切らない完成度に満足したと話す。

「『ドラリオン』や『トーテム』なども見てきましたが、とにかくレベルが高いスペシャリストたちを結合させる演出がすごい。撮影もできてお得感がありました。でも、撮るよりも、ずっと見ていたい気持ちのほうが強かったですね」

「シルク初体験」の記者にとっては、ひたすら目を見張った2時間だった。空中ブランコなど驚くべき身体能力を駆使する「動」に息をのみ、パントマイムの情緒的な「静」に見入り、多彩なパフォーマンスに釘付けに。会場からは拍手や口笛が飛び交い、演者と観客との一体感も味わった。

 今回の公演で唯一の日本人として出演しているのが、クララ役の池田一葉さんだ。プロダンサーとして米国で活動していた池田さんが「シルク」に興味を持ったきっかけは、「O(オー)」のラスベガス公演を見たときだ。

 職業柄、ショーを見ると「粗探し」をしてしまう池田さんが、「その余裕もないほど惹きつけられました」。

 一員になりたいという思いが募った。アクロバティックな技を得意とするパフォーマーだけでなく、「シルク」は俳優やダンサーもメンバーになれると知り、2011年、初オーディションに臨んだ。不合格だったが、くじけずに挑戦し続け、6年越し、8回目にして射止めたのが今回のクララ役だ。夢をかなえた原動力は「あきらめの悪さ」と笑う。

 クララは異次元に生きる人間ではないキャラクターだ。感情のゆるやかな変化を繊細に表現しながら、これまで使ったことがない筋肉の動きも同時に求められる。役作りで難しかったことを尋ねると、「全部です」と池田さん。見どころは「初めて恋心を抱いたクララが、主人公のシーカーのネクタイを直すところ」という。

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