糖質制限真っ盛りで、肉食を肯定的に捉える時流に乗って日本は今、空前の肉ブーム。その中で健康への志向がより明確になってきた。すべてが集まる東京でいざ、肉探しへ。
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例えば、新宿・歌舞伎町に出てみればわかる。右を見ても左を見ても焼き肉屋という一角があり、肉バルも急増した。インスタ映えする“フォトジェ肉”などという言葉も生まれ、女性でも肉食を堂々と楽しんでいる。
まず牛肉に目を向けると、4~5年前からの赤身肉や熟成肉の流行は継続中。ただし、昨今はローストビーフ丼などはもう下火で、赤身の提供スタイルも多様な展開を遂げている。種別や産地を問うのはいわば当たり前。さらに生育環境にもこだわるようになってきている。
とりわけ注目されるのが牧草牛(放牧牛)。文字通り、広々とした牧場で、牧草を食べて育った牛をいう。豪州やニュージーランド産が主だが、和牛を同様の環境で育てる試みもなされ、市場にも出回りだした。この牧草牛を使用したシュラスコの食べ放題が売りなのが、虎ノ門に本店がある「肉塊UNO」だ。
牧草牛の肉は赤身が主だ。カロリーは穀物肥育牛の約62%、脂質は約40%(ヒレ肉での比較)なのに、約3倍もの鉄分など、タンパク質以外の栄養素もふんだんに含まれている。肉本来の旨みが凝縮し、いくらでも食べられることから、同店では糖質制限食を標榜している。
「綺麗に“サシ”の入った芸術品としての和牛を否定はしませんが、いわば無理矢理太らされたメタボ体形。その点、牧草牛は自然の中でストレスフリーで育ち、身が締まっている。いわば、アスリートの肉です。どちらが体にいいんだろうと考えると、狩猟時代の人間の本質に立ち返る気もするんです」
と話すのは代表の宇野翔士さん。肉の下味も塩だけ。ワサビ醤油などをつけて食す。下手に凝らず、シンプル。照明も明るく、余計に肉の赤身が輝いて見える。
「他に目移りせず、食事だけに集中してもらいたいんです。常時肉を焼いている厨房はシースルー。そこにフォーカスしてもらえれば、目の前で肉が焼かれているという体感もエンタメになる。従来のシュラスコは薄くスライスするけれど、ウチは厚切りでどちらかといえばステーキに近い。目の前で肉をカットする演出という、いい部分をそこから取りました」(宇野さん)