小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
「よりそいチャット」はLINEやチャットルームで相談できる(撮影/今村拓馬)
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よりそいチャット(https://yorisoi-chat.jp)
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 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【大切なのは寄り添うこと】

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 もしも子どもが、ツイッターに「消えてしまいたい」と書き込んだら……。日本は先進7カ国の中で唯一、若者の死因で自殺が事故を上回る国。かつて年間3万人を超えていた自殺者数が減少傾向にある中、昨年の10代の自殺者数は前年より増加しています。

 神奈川県座間市で9人の遺体が見つかった事件では、ツイッターに自殺願望を書き込んだ若者たちが言葉巧みに誘い出されました。知らない人の「一緒に死のう」という言葉を、なぜ信じてしまうのでしょうか。

 自殺対策支援センターライフリンク代表の清水康之さんは「悩みを相談した経験が少ないからでは」と指摘します。SNSのやりとりでは、そうした“相談素人”を狙う人物の言葉を信じて、心を許してしまいやすいというのです。

 厚生労働省は事件の再発防止のため、今年3月の自殺対策強化月間にSNSを活用した相談事業を支援。ライフリンクは支援を受けた13団体の一つで、社会的包摂サポートセンターと協働してLINE等で相談を受け付け、相談者が必要な支援にたどり着けるようにしました。

「大事なのは、自殺や死という言葉をタブー視しないこと」と清水さん。“死にたいくらいつらいのですね”と相談者の気持ちに寄り添い、その上で“死ぬ以外の方法で今の苦しさを回避することもできるのでは”と具体的な支援策を示すことが重要だといいます。思いつめるのは、支援情報の不足と悩みの複雑さゆえ。助けてくれる場所があると知り、解決の優先順位をつければ視点が変わります。

 子どもを守るために、親ができることはあるのでしょうか。「普段から、子どもに困りごとや悩みを打ち明けられたら、よく打ち明けてくれたねと褒めてあげてください。自立とは、悩みを一人で抱え込まず、自発的に行動して助けを求められるようになることです」。LINE相談は4月以降も続行するそうです。

AERA 2018年4月9日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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