採用活動が解禁された3月1日、大阪市で開かれた合同説明会には多くの学生が訪れた (c)朝日新聞社
採用活動が解禁された3月1日、大阪市で開かれた合同説明会には多くの学生が訪れた (c)朝日新聞社

 2019年春に卒業する大学生の就活が始まった。「売り手市場」が続き、人材争奪戦が激化するなか、これまで一律とされた初任給にも変化が出てきた。

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「新卒でも能力に応じて給与を個別査定してもらえるのはありがたい」
「技術力向上へのモチベーションアップにつながる」

 学生からの評判は上々のようだ。IT大手サイバーエージェントは、今年4月以降に入社するエンジニア職を対象に、これまで一律に定めていた初任給制度を撤廃した。最低年俸を450万円とし、人工知能(AI)などの高度な技術を持つ学生には最低720万円を提示する。同社は「AIやブロックチェーンなど新たな技術の活用機会が広がっている。それらのスキルを保有し、入社後、即戦力になる学生も増えた。入社時から能力別給与体系を導入すべきだという考えから、一律の初任給制度を撤廃しました」と説明する。

就職白書2018」(リクルートキャリア)によれば、初任給に格差をつけた採用を実施する企業は前年比4.2ポイント増の13.5%。従業員5千人以上の大企業に絞って見れば、26.9%にも達する。

 ソフトバンク・テクノロジーは2017年、通常の採用とは別に「グレードスキップ制度」を導入した。同社の事業分野のコンテストなどで入賞経験があったり、学生時代に起業経験があったりすれば、一般採用より上の等級で入社できる。最高で、管理職の一つ手前の等級での入社になり、初任給は通常の学部卒に比べて35%高い月額30万5千円になる。正岡聖一・人事本部長はこう話す。

「NPO体験なども評価の対象に入れ、文系の優秀な人材の獲得も目指しています。制度導入によって評価のポイントが明確になったことで、大学院卒の志望者が2倍に増えた」

 こうした初任給に格差をつける企業の動きの背景には何があるのか。HR総研の松岡仁・主席研究員はこう指摘する。

「初任給に格差をつけているのは昔ながらの年功序列型の会社ではなく、フリーマーケットアプリを運営するメルカリなどベンチャーが中心です。その大半がIT系企業で、背景にはエンジニアの争奪戦がある。全体を見れば格差をつける会社は増えているが、まだ局所的です」

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