また、就職みらい研究所の岡崎仁美所長は「採用対象が多様化したことから、初任給の格差が生まれてくる」と指摘する。

 先出の「就職白書2018」によれば、「海外の大学、大学院を卒業した外国人の採用を予定する企業」は全体の10.6%。従業員5千人以上では31.3%に達する。日本のような年功序列の賃金形態では、成果主義の彼らを獲得することは難しい。

 同じく売り手市場にわく高校生の就職市場でも、初任給格差が生まれている。高卒の求人倍率は2.48倍と大卒の1.78倍(18年3月卒・ワークス大卒求人倍率調査)を大きく上回る。

 高卒新卒採用の就職求人サイト「ハリケンナビ」を運営するハリアー研究所の新留英二社長は、こう指摘する。

「大学生とは違い高校生は先生や親のアドバイスで就職先を決める。高卒で就職する家庭には母子家庭や生活保護家庭も少なくない。子どもからの援助を期待する部分もあり、給料はよく見られる。大卒並みの初任給を設定することで、採用力を高めようとする企業も出てきた」

 事業用不動産大手のエリアクエストは17年から高卒の新卒採用を開始。初任給を22万5千円とした。新卒採用の軸足を大卒から高校生に移した狙いを清原雅人社長はこう話す。

「メジャーな大企業にエントリーシートが集中することで、就職サイトなどに採用予算をかけても人が集まらず定着率も低い。高卒でも中卒でも活躍している人間はたくさんいる。素直な高卒者を一から育てていきたい」

 大学生も高校生も完全な売り手市場のなか、採用の常識も変わりつつある。(編集部・澤田晃宏)

AERA 2018年4月2日号