就職活動の面接などで、用意してきたことは流暢(りゅうちょう)に話せるけれど、想定外のことを聞かれると全く言葉が出てこない学生がいます。思考の蓄積がなく、内なる言葉の解像度が低いからです。羽生選手は、記者会見などで想定外の質問にも答えられる。日々、無意識を意識化しているからこそ、それができる。

「メンタルが強い」とよく言われますが、はたしてそうでしょうか。とても繊細な感性を持ったアスリートのようにも見えます。内に秘めた思いが強く、弱さや弱点を乗り越えるために、まさに言葉を武器にしてきた人なのではないでしょうか。

(構成/編集部・高橋有紀)

AERA 2018年3月26日号より抜粋