「普段から論理的に物事を考え、冷静に戦争の本質を見据えていれば、政治のリーダーがあれほど単純なメッセージを発することは有り得ません。米国はことあるごとに『民主主義のため』と唱えますが、相手を知った上で、どう導けばいいかという戦略がない。北朝鮮でも同じことを繰り返そうとしているように映ります」(林氏)

 米国が北朝鮮に軍事的な対応をする場合、その目的は体制崩壊なのか、核排除なのか。さらに「戦後」を見据えた大局的な政治判断ができているのか。これらが不明確なまま、日本政府は「北朝鮮への圧力」と「日米同盟強化」を繰り返し唱えるばかりだ。林氏はあきれて言う。

「日本ではまるで北朝鮮が攻めてくるような大騒ぎをしていますが、北朝鮮は攻撃されれば仕返しをする、火の海にするぞと言っているだけです。北朝鮮の軍事的、政治的意図を見据えれば、いたずらにおびえる話ではなく、政治的に解決すべき事案であることが浮かびます。米軍の場当たり的な軍事運用に日本は付き合おうとしていますが、それで本当に大丈夫ですか。そうした現状に国民も政治家もしっかり向き合っていますか」

 さらに北朝鮮への対応について、こう強調した。

「国際社会を秩序立てられるかを占う重要な実験になります。この実験に失敗したら、戦争の世紀が今後も続くでしょう」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2018年3月19日号より抜粋

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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