ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
(c)朝日新聞社
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 マーケットには「ストーリーが変わるときは注意せよ」という格言があります。アメリカで言われる“When the story changes, pay attention.”であります。その意味で言うと、ここ数年間のアメリカのマクロ経済におけるストーリーは変わっていませんでした。雇用は力強く増え、人口増を背景に経済は持続的に成長。低インフレで金融政策は緩和的――などですね。まあ、オバマ大統領の政策が一貫していたと言ってもいいと思います。

 2017年のトランプ大統領の登場は予期せぬ変化と言えば変化で、世界経済が再び成長の波に乗り始めたのも変化でしょう。しかし、友人でエコノミストのビル・マクブライド氏も指摘していますが、18年になって、これまでにない変化が見えています。経済にとって追い風と逆風が両方吹いている、というのはこれまでとまったく異なります。

 アメリカの税制変更は高所得者にはメリットがあり、短期的には経済成長を促す効果はあるでしょう。しかし一方でFRB(連邦準備制度理事会)が利上げを加速するかもしれません。その場合は思わぬ逆風となります。住宅投資にはネガティブなインパクトをもたらし、住宅ローン金利の上昇は明らかな逆風と言えるでしょう。さらにここにきて唐突な関税引き上げと輸入制限を宣言、あからさまな貿易戦争を仕掛けてきた感もあり、逆風というより、明らかにダウンサイドリスクと言うべきです。

 減税による若干の景気加速(景気が良すぎる状況で減税をしても効果は極めて小さい)、それによる財政悪化、貿易における様々な軋轢などを考えると、これまでの数年間と「同じストーリー」とは言えないことになりますね。

 私自身は18年のアメリカ経済が引き続き成長することには確信を持っていますが、「ストーリーが変わってきた」という兆候はよくお考えになるべきだと思います。

 起きないとは思いますが、リーマン級の金融危機が起きれば今の政権はひとたまりもないでしょう。ケリー大統領首席補佐官は軍人としての経歴は立派で人格的にも素晴らしいですが、経済問題に関しては未知数。FRB議長も代わったばかりですし、トランプ大統領の存在そのものが最大のリスクという私の予言が当たったということでもあります。

AERA 2018年3月19日号

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