(編集部注)ちなみにこの英文はグーグル翻訳では以下のような和訳になり、和訳からは作れない英文であることがわかる。私はこれが最後の要求であることを知っていますが、もしあなたがそれを考えることができれば素晴らしいでしょう。

 さらに関谷さんによれば、グーグル翻訳を使ううえで、念頭に置いておきたいのが、英語と日本語は、必ずしも「対」にはならないということだ。

「お世話になっております」にあたる英語がないことは、グーグル翻訳にかけるまでもなく、ご存じの人も多いだろう。

 単語ひとつが持つ意味の範囲も異なる。たとえば「水」と「water」。日本語の場合、水は冷たいものであり「熱い水」ではなく「湯」になるが、英語の場合は冷たくても熱くてもwaterはwater。湯に該当する1語はなくhot waterである。

 機械的に1対1で表示されるグーグル翻訳を見ると、正解がひとつであるように錯覚してしまうが、現実はそうではない。状況に応じて適した言い回しはいくつもあるし、ビジネスの「お作法」まではグーグル翻訳は教えてはくれない。伝えたいニュアンスに近い言葉を探すなら、辞書を引くほうがよいこともある。

「グーグル翻訳が英語学習をやめる口実にはなりません」

 と関谷さん。グーグル翻訳は、自分が持っている英語力を「拡張」してくれるもの。もとがなければ拡張しようがない。

「ヒントや手がかりにはなりますが、ヒントを最終的に生かせるだけの英語力は必要です」

 そのためにはTOEIC700点ぐらいの英語力は持っておきたい、と関谷さんは言う。(編集部・高橋有紀)

AERA 2018年3月5日号より抜粋