企業の負担が高まるのは間違いない。結果として正社員への影響が出る可能性もある。

「非正社員との待遇差の解消でコストが増える分、正社員の昇給やボーナスが抑制される可能性は十分に考えられます」

 非正社員にはいいことばかりのように思えるが、課題もある。コスト増を避けるために、企業が非正社員には簡単な仕事しか任せず、「同一労働」を避ける動きが出る可能性があるのだ。

「仕事の違いを合理的に説明できれば、同一賃金にする必要はありません。非正社員の仕事を差別化するために業務範囲を簡易化すれば、スキルアップが難しくなる。一方で、非正社員の仕事が制限される分、正社員の負担が増えるかもしれません」

 仮にそうなれば、長時間労働の是正を掲げる働き方改革によって、かえって正社員の労働時間の問題が深刻化する皮肉な結果になる。中小企業には別の影響が出る恐れもありそうだ。

「正社員の賃金水準が非正社員にも影響するため、非正社員のなかにも、給与水準が違う大企業と中小企業で格差が生まれます。そうなると、給与水準の低い中小企業の採用にも大きな影響が出ると考えられます」

 制度の導入は2年後に迫る。対応に動く企業はまだまだ少数だという。(編集部・澤田晃宏)

AERA 2018年2月26日号より抜粋