稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年、愛知県生まれ。元朝日新聞記者。著書に『魂の退社』(東洋経済新報社)など。電気代月150円生活がもたらした革命を記した魂の新刊『寂しい生活』(同)も刊行
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年、愛知県生まれ。元朝日新聞記者。著書に『魂の退社』(東洋経済新報社)など。電気代月150円生活がもたらした革命を記した魂の新刊『寂しい生活』(同)も刊行
最近話題の「熟成酒粕」をゲット!粕漬けライフもスタートだっ(写真:本人提供)
最近話題の「熟成酒粕」をゲット!粕漬けライフもスタートだっ(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

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 またまた菌の話でしつこくてナンですが、どうしても自慢したい気持ちを抑えきれぬ私。

 だってね、先日のアエラの特集では19ページにわたり菌について徹底調査と考察が行われ、描かれたのは壮大な叙事詩のごとき菌と人類のあくなき戦いでありました。感染症対策だけじゃない。理想的な腸内環境を手に入れるべく研究や商品開発に奮闘する人々。ナニナニ腸を制すれば風邪も花粉症もがんも鬱も征圧? そりゃ無関心ではいられません……と、途中まで読んで気づいてしまったのだよ。

 私の腸内環境、まさに理想的です!

 毎朝バナナ便がするりと出るのは当たり前。トイレ掃除などせずとも吸い込み口はいつもツルピカで、トイレットペーパーも全然減らない。特集によれば、これって完璧に「腸内フローラ」が保たれてる状態です。

 で、なぜこんなことになったのかを考えたら、なんと冷蔵庫をやめたからじゃないですか。冷やすという手段を奪われたら食品の保存は「干すか漬けるか」しかなくなり、結果、食卓は毎日発酵まみれ。ぬか漬け、味噌、醤油、酒粕を食べまくる日々。「埋蔵菌」を持つという家康公の食卓を見て、思わず我が家かと思ったよ。

 でね、考えてみれば、こういう食生活って家康公に限らず、冷蔵庫のない時代はフツーだったんじゃないでしょうか。

 我が先祖は高温多湿な気候の中で食材を保存すべく、長い歴史の中で少しずつ菌を味方につけ、豊かな発酵文化を育んできたのです。でも簡単・便利な冷蔵庫の登場で、こうした手間のかかる習慣と知恵は一瞬にして脇に追いやられ、我々は発酵していないものを常食するようになりました。

 結果、腸内環境は乱れ、進化する菌の攻勢に耐えられず、これは大変とあちこちで大掛かりな研究や商品開発が行われている……のではないでしょうか。

 何か、ヘンです。これはこれで壮大なストーリーですが。っていうか、壮大なマッチポンプ?

AERA 2018年2月12日号

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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