中国軍に島を奪われないためには周辺の海で自衛隊が優勢を保たないといけない。中国軍は爆撃機に積める射程1500キロ以上の巡航ミサイルを持つ。島の周辺で双方の艦船がつばぜり合いをするにも、遠くからその場に届くミサイルが中国軍にあるのに、自衛隊になければ話にならないというわけだ。

 もう一つは、導入に向け21億円で試験用弾薬を買う米国製の次期迎撃ミサイル、SM6だ。

 今の日本のミサイル防衛は、放物線を描いて飛来する北朝鮮の弾道ミサイルに対応している。だが、SM6は巡航ミサイルを迎撃でき、防衛省はイージス艦に載せるとしている。

 新年度予算案では、いま北朝鮮の弾道ミサイル警戒に忙しいイージス艦の負担を減らすとして、同じ役割を陸上で果たせるイージス・アショアの整備に着手する。北朝鮮警戒から外れるイージス艦がSM6を載せ、備える相手は言うまでもない。

 長射程の巡航ミサイルと、巡航ミサイル防衛という、かつてない兵器を持とうとする日本。

「相手は中国だと言わなくても中国はわかる。それが抑止力になる」と防衛省幹部は語る。

 こうした兵器体系を築くため防衛省で研究が進む構想がある。米国が唱え、同盟国との共同運用も視野に入れる統合防空ミサイル防衛(IAMD)だ。

 2014~16年に防衛相を務めた中谷元・衆院議員はIAMDに早くから注目し、15年にハワイの米太平洋軍司令部を訪れ意見交換した。

「島国の日本は空からの脅威に備えて陸海空自衛隊の連携が欠かせず、もっとネットワークで情報を共有し対応しないといけない。そのために米国の取り組みを見たかった」(中谷氏)

 米軍幹部とイージス・アショアやSM6によるミサイルへの対応についても協議し、防衛省での検討を指示した。

 中国に対し日本版IAMDを展開するのか。それは、そもそも中国という国にどう向き合うのかという大問題だ。

 中国の習近平(シーチンピン)国家主席は「中華民族の復興という中国の夢」を掲げる。列強に侵略された屈辱の歴史をバネに軍拡を進めつつ、経済大国として世界との相互依存を深めている。果たして、日本は折り合えるのか。

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