- ビジネス
- 記事


経済学者で同志社大学大学院教授の浜矩子さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、経済学的視点で切り込みます。
* * *
「あなたにフレネミーはいますか?」。そう聞かれたら皆さんは何と答えられるだろうか。フレネミーは造語である。正確にいえば合体語だ。二つの言葉がくっつくことで出来上がる。
フレネミーを日本語でいえば、トモテキになる。友と敵。この両者がくっつくと、フレネミーが誕生する。この言葉がどうも最近はやっているらしい。
この言葉そのものはかなり以前から存在していたようだ。だが、あまり世の中で多用されることはなかった。ところが、このところ何かと目に触れ、耳に入ってくる。友と敵が融合する時、そこに出現するのは一体どんな代物なのだろうか。グローバル時代を人々が生きていくには、お互いに友でもあり、敵でもなければいけないのだろうか。それは少し怖い。
さて、ここでもう一つ質問をさせて頂きたい。あなたの生活にフレキシキュリティーはありますか?。これには、皆さん、どう答えられるだろう。これを日本語でいえばどうなるか。ジュウテイである。柔軟性と安定性が共存する姿だ。フレキシブルだけどセキュリティーもある。いいとこ取りの生活である。これも起源はそれなりに古い言葉らしく、北欧諸国が得意とするライフスタイルなのだという。なるほどね。誰もが理想とするところだろう。グローバル時代は、我々にジュウテイ・ライフを保障してくれるだろうか。
ところで、合体語ならば筆者もまた得意な分野だ。かなり前に、アリギリスというのを発明した。アリさんとキリギリス君がくっつけば、たちどころにアリギリスが出来上がる。謹厳にして華麗。実直にして遊び好き。これまた、理想的な黄金バランスである。
誰もがアリギリスになれば、グローバル時代は、まさしく黄金バランスを手に入れることになるだろう。誰も借金しすぎない。誰もカネを貯め込みすぎない。みんなほどよくカネを使い、ほどよくカネを節約する。これなら、かのトランプ親爺さんでさえ、文句のつけようがない。グローバル時代は、みんな、アリギリスでいこう。
アリとキリギリスは、フレネミーかもしれない。でも、アリギリス同士はいつもフレンズ。
※AERA 2018年1月22日号

浜矩子
浜矩子(はま・のりこ)/1952年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業。前職は三菱総合研究所主席研究員。1990年から98年まで同社初代英国駐在員事務所長としてロンドン勤務。現在は同志社大学大学院教授で、経済動向に関するコメンテイターとして内外メディアに執筆や出演
このコラムニストの記事をすべて見るあわせて読みたい
別の視点で考える
特集をすべて見る
この人と一緒に考える
コラムをすべて見る
カテゴリから探す
-
ニュース
-
教育
-
エンタメ
-
スポーツ
-
ヘルス
-
ビジネス