記者会見した公取委の深町正徳企業結合課長は、「統合後も競争環境が維持されるかどうかが、最も重要な判断基準だった」と審査の過程を振り返った。公取委は新潟県内の企業向け融資を「大・中堅企業向け」と「中小企業向け」に分類した上で、県内企業約6900社にアンケート(有効回答は約5割)を行うなど詳細な調査を重ねた。特に「中小企業向け」については、県内を10の経済圏に分けて実態調査する念の入りようで、第四銀行も審査に協力した。

 次の焦点は長崎県の親和銀行を傘下に持つふくおかフィナンシャルグループ(FG)と同じ長崎県のトップバンク、十八銀行の統合に移る。「こちらの統合承認は容易なことではない」(地銀関係者)と見られる。実際に公取委の承認が得られず、無期限延期に追い込まれた。統合の相手を変えるなど再編そのものを根底から見直さなければならない可能性が高い。

 もうひとつ、地銀再編を象徴するのはメガバンクを巻き込んだ動きだ。三井住友FG系列と、りそなホールディングス系列の関西地銀3行が経営統合する。総資産は一挙に地銀6位に浮上。体力がけた違いに強いメガバンクのもとで一息つけるとあって、「地銀再編の理想型」ともいわれる。地銀業界が浮足立つのも無理はない。

 昨年度の決算時点で、すでに地域銀行の5割以上で本業利益が赤字に転落しており、再編は待ったなしと言える。今後の鍵を握るのは、「公的資金の注入を受けている地銀となろう」(メガバンク幹部)。金融機能強化法に基づき公的資金の注入を受けている地銀は、福邦、南日本、みちのく、第三、東和、高知、北都、宮崎太陽、豊和の9行。すでに再編に踏み込んだ銀行もある。公的資金を受け入れる代わりに収益などの数値目標を掲げるが、厳しい環境下、未達となっている銀行も少なくない。生き残りをかけた再編は、ますます激しくなりそうだ。

 新年早々、三重県の桑名、三重の両信金の合併が明らかになった。地銀では九州や東北地区での統合話がくすぶる。金融庁は最新の金融行政方針に「退出」の2文字を盛り込んだ。地銀の退場もさらに現実味を帯びる。(経済ジャーナリスト・森岡英樹)

AERA 2018年1月22日号より抜粋