森長官の念頭にあるのは、顧客ニーズを無視して手数料稼ぎにつながる投信や保険の「回転売買」の推進や、必ずしも顧客の利益に結びつかない毎月分配型投信の推奨が依然として残っていることだ。

 営業担当者は「回転売買」を顧客には「損切り」と説明するなどし、短期間に投信の乗り換えを勧めることでその都度、手数料を得ている。売りと買いが同時に行われることで手数料が2回得られる。「かつ1件当たりの手数料は、仮に1千万円購入で20万円、外貨建て保険だと60万~70万円が銀行に入る商品もある」(地銀中堅行員)という。

 回転売買が決して顧客のためにならないと、売る側の銀行員は自覚している。だが、銀行は「ノルマ」が厳しく、利益の押し上げには高い手数料を得られる投信や外貨建て保険の「押し売り」まがいの営業をせざるを得ないと明かす。ジレンマに苦しむ銀行員の姿は痛ましい。

 本業の不振に悩むのは地銀ばかりではない。地域や職域に密着した営業を展開する協同組織金融機関の信用金庫・信用組合もまた苦境に立たされている。

 昨年9月末、90年を超える歴史を持つ農林系の職域信用組合、甲子信用組合がひっそりと幕を下ろした。農林中央金庫の職員向けに住宅ローンを提供していたが、低金利競争についていけずに、退場を余儀なくされた。こうした職域に特化した信組の解散は続いている。

 同じ昨年9月には静岡県の浜松信用金庫と磐田信用金庫、しずおか信用金庫と焼津信用金庫がそれぞれ合併することを決めた。相互扶助をベースとする信金・信組は、収益を顧客や出資者に還元することが基本で、株式会社のように収益第一を掲げてはいない。その分、税的な恩典などが付与されているが、他の金融機関との競合は避けられず、超低金利下にあって、さらなる再編は待ったなしの状況だ。取り残されたところは解散へと進まざるを得ない。

 同様に、地銀の再編も今後、雪崩を打つ可能性が指摘されている。そのひとつ、懸案事項だった新潟県で動きがあった。公正取引委員会(公取委)は昨年12月15日に第四銀行と北越銀行の統合を承認すると発表した。融資などの県内シェアが高くなりすぎるとして2次審査入りしたことに伴い、統合時期が18年4月から半年延期されていた。

次のページ