小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
ブロガーで作家のはあちゅうさんが被害を告白したのを機に、ツイート数は急増した (c)朝日新聞社
ブロガーで作家のはあちゅうさんが被害を告白したのを機に、ツイート数は急増した (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【写真】被害を告白した人気ブロガーのはあちゅうさん

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 もうおなかいっぱい、という人もいるかもしれません。おせちの話ではなく、#MeTooのことです。

 そもそも100パーセント被害者の人なんているの?誰だって多少は身に覚えがあるでしょう?という意見はもっともです。レイプや痴漢は許せないと思っていても、自分がかつて誰かにセクハラをしたかもしれないと不安を感じている男性は少なくないでしょう。悪気はなかったんだけど、知らなかったんだと。女性も同様です。親しみを込めた冗談や、仲間とのふざけっこが、実は相手を傷つけていたのかもしれないとハッとしたのではないでしょうか。

 私も過去の自分を思い出して、悔やむことがたくさんあります。時代とともに常識が変わり、いろんな気づきや学びがありました。30年前に保毛尾田保毛男を笑っていた自分が、今は怒りを感じるように。

 #MeTooを受けて被害を告発したブロガーで作家のはあちゅうさんは、過去の発言が男性に対するセクハラではないかとの批判を受け謝罪しました(後に撤回)。批判されたからといって、彼女にセクハラ被害について語るなというのは筋違いです。声を上げた人を叩くのは、被害者へのNOであり、暴力へのNOではありません。

 もしもあなたが過去の自分の言動を後ろめたく思うなら、沈黙よりも「もうやめよう」のシェアを。あなたと同じように、これまで普通だと思っていたことがセクハラや暴力だったのだと気づく人が増えれば、新たな被害を減らすことができます。偉そうなこと言えないしなあ……と黙ってしまったら、現状は何も変わりません。

 大事なのは暴力やハラスメントをなくすこと。「被害にあった人が悪いのではない。泣き寝入りしなくてもいい」を浸透させ、制度や合意をつくることです。おなかいっぱいなら吐き出す番かも。「もうやめよう」を、ご一緒に。

AERA 2018年1月15日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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