この仕組みは、採用側にとってもメリットが大きい。DODAが発表した2017年11月の転職求人倍率によれば、全体の2.46倍に対して、技術系(IT・通信)は8.17倍と、人材確保は難しい。

 一方、スカウティのデータベースには、メールアドレスが判明しているケースに限っても約3万5千人の情報がある。さらに、SNSでの「辞めたい」といったつぶやきや、在職する会社の平均勤続年数などからAIが予測した「転職可能性」も表示される。人事担当者は、「具体的に活動はしていないけれど、転職したい」という潜在層に、効率的にオファーできる。

 企業と社員とのミスマッチは採用段階だけでなく、入社後も課題だ。ネオキャリアが人事向けに展開するクラウド人事管理サービス「jinjer(ジンジャー)」では、社員の「笑顔」からストレス度合いを判定できる仕組みを導入。不満や不調を早期に察知し、離職に至る前に対応できる。

「出勤」「退勤」の際、タイムカードを押すように、タブレットやスマートフォンに笑顔で写ってもらう顔認証で記録する。この画像をAIが、2万人の笑顔データを参照して100点満点で点数化。勤務状態などのデータと掛け合わせ、従業員のストレス度合いを7段階で判定し、人事担当者に通知してくれる。

 例えば、「ずっと笑顔点数が高かったのに急に下がった」という場合などで早期に面談などの対策が打てる。

 もともと採用や転職支援がメイン事業だった。

「『採用して終わり』ではなく、その後もフォローできるような仕組みをつくりたかった」
 と、開発を担当した小口敦士さんは言う。

 ここ30年以上変わらず、新卒の3割は3年以内に辞めていく。企業と社員の長引く「すれ違い」にピリオドを打つのは、AIかもしれない。(編集部・市岡ひかり

AERA 2018年1月1-8日合併号