暴行事件で揺れ続ける角界。相撲ファンに希望はある?(※写真はイメージ)
暴行事件で揺れ続ける角界。相撲ファンに希望はある?(※写真はイメージ)

 元横綱・日馬富士の暴行問題から揺れ続ける角界。東京堂書店・竹田学さんがおすすめする星野智幸さんの著書『のこった』は、相撲の世界を通して日本に蔓延する「日本ファースト」の風潮に警鐘を鳴らしている。

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 著者の深い相撲愛に心うたれ、胸かきむしられる異色の相撲エッセーである。横綱貴乃花への実存的ともいえる思い入れをはじめ、土俵上の取組や相撲の現状、力士へのまなざしはこまやかで厳しく優しい。鋭い政治意識を内包した想像力あふれる文学世界を押し広げてきた著者は、希代の相撲ファンでもあった。

 本書は土俵から日本社会の現実を凝視する現代日本批判の書でもある。モンゴル人力士へのヘイト野次とそれを許す相撲協会・観客・メディアを批判し、日本に蔓延する「日本ファースト」の風潮に警鐘を鳴らす。相撲をより多様で開かれたものにしたいという著者の希求は、マイノリティーの視座を文学の核とする姿勢に支えられて揺るぎない。暴行事件で揺れ続ける角界。それでも土俵に、そして相撲ファンに希望は「のこった」と著者とともに信じたい。

AERA  2018年1月1-8日合併号