顔も見たことがないような甥や姪が突然、代襲相続で相続争いに関わってくるケースなど、権利をしっかりと主張する世の中にもなってきている。だからこそ、法律をしっかりと理解した上で、生前から時間をかけ、しっかりと準備をしておくことが、相続発生後のトラブルを回避するためには、ますます重要になった。

 鞠子氏は強調する。

「遺言があれば防げる相続争いに何年も費やすなんて人生の損失です。遺言は、残された家族らが無用な骨肉の争いをしなくてもよいよう、生前から手だてを講じる被相続人の『思いやり』でもあるのではないか」

 遺言を作るにも、財産目録の作成や相続人の把握などのさまざまな備えが必要だ。

相続に対する世間の関心を高めた大きな要因の一つである15年の税制改正で基礎控除額が引き下げられたことによって、課税対象者が一気に増えた相続税についても、事前に調べておきたいところだ。

 税理士法人レガシィの大山広見税理士(55)によると、税制改正後の3年間で、相続税の申告をした人は増えた。「課税対象になるのかどうか、幅広い層の人たちが心配になり、これまで相続税を意識してこなかった人たちまで意識するようになった」と話す。

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