そのため“県に権限がある時代なら通せない案を市は通そうとしている”と見る向きもある。

 角田さんは「自治体が民間の開発のために市街化区域を増やすのは異例のこと。これが前例となれば全国に広がる可能性があり、横浜だけの問題ではない」と語る。国土交通省も「都市計画提案で市街化区域が増えるのは異例」(都市計画課・東野文人企画専門官)という。

 しかし石津さんは「前回と今回では開発計画の中身そのものが違う。前回は自然環境へのインパクトが大きいと考え市が認めなかった。今回の計画はより環境に配慮がなされている」として提案の合理性を主張する。

 東急建設営業本部の今井博史さんが次のように説明する。

「計画では一戸建てとマンション含め300戸の住宅に加え商業施設を建設するが、区域の7割を特別緑地保全地区や公園などとし横浜市へ移管する。予定地は道路で東西に分かれるが、ホタルがいる東側の沢は保全され、西側の湿地にいるホタルは開発前に保護し、新たに湿地を創出して生息地を代償する」

 東急建設によると予定地には約70人の地権者がいる。ある人は開発を前提に個別の土地利用を控えてきたと言う。

 だが、委員会の共同代表で元横浜市議、藤田みちるさんは、「50年後、かつてのニュータウンが残るのと里山の風景が残るのと、どちらが本当の財産になるのか? 地権者の方々と合意できる案がないか対話したい」と呼びかけている。

 横浜市は、本年度中に計画の可否を正式決定する。(ライター・桑原和久)

AERA 2017年12月11日号