開発予定地。一部は14メートルの盛り土で宅地造成される。住民直接請求に必要な署名数は約6万2千(市内有権者の50分の1以上)、署名活動の期限は12月10日(撮影/角田さん提供)
開発予定地。一部は14メートルの盛り土で宅地造成される。住民直接請求に必要な署名数は約6万2千(市内有権者の50分の1以上)、署名活動の期限は12月10日(撮影/角田さん提供)
横浜在住の美術家、葉栗翠さんの手による開発予定地の風景。瀬上沢周辺に生息する18種の動物が描き込まれている(パタゴニア横浜・関内店)(撮影/桑原和久)
横浜在住の美術家、葉栗翠さんの手による開発予定地の風景。瀬上沢周辺に生息する18種の動物が描き込まれている(パタゴニア横浜・関内店)(撮影/桑原和久)

 横浜市栄区にある市内最大のホタルの自生地。その開発の是非を問う住民投票条例の制定を目指し、市民グループが署名活動を行っている。

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 大都市の中に置き去りにされたように残る里山の風景。横浜市栄区にある瀬上沢周辺の緑地地区は、市内最大のホタルの自生地だ。同エリアの約30ヘクタール(東京ドーム約6.5個分)について、東急建設が、横浜市に対し、宅地・商業施設建設を含む都市開発計画を提案。横浜市は同案を評価し、現在、実現に向けて手続きを進めている。

 市民有志は「横浜のみどりを未来につなぐ実行委員会(以下委員会)」を立ち上げ開発の是非を問う住民投票条例の制定を目指し署名活動を展開。アウトドアメーカー、パタゴニア日本支社(横浜市)もこれを支援する。

 委員会メンバーで認定NPO法人ホタルのふるさと瀬上沢基金の角田東一さんは語る。

「横浜市は空き家が年々増加し人口は2019年をピークに減少する。計画は、今後宅地は増やさないという国の『国土利用計画』にも反する。そこまでして貴重な緑を破壊して、宅地を増やす必要があるのか?」

 これに対して、横浜市都市整備局の石津啓介さんは「すべての空き家が埋まるまで開発してはいけないということではない。若い人に住んでもらえる魅力ある都市づくりのために良質の住宅地を供給することも必要。国の方針にも矛盾していないと考えている」と反論する。

 予定地は開発の規制が厳しい市街化調整区域だが、計画では一部の区域区分を規制が緩やかな市街化区域に変更し宅地造成する。角田さんらは、そのことも問題視している。実は、区域区分を変更する権限は、11年の法改正で政令指定都市に移譲されたが、それ以前は都道府県にあった。法改正前の07年にも、東急建設は区域区分の変更を伴う同地区の開発を提案(この時点では県と市の承諾が必要)した。だが市民約9万の反対署名もあり、却下された。

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