AERA dot.

「閉校」の文字ちらつく学校も… 地方私大が生き残るための2つの道

このエントリーをはてなブックマークに追加
作田裕史AERA

松蔭大学は収容定員充足率過去3年平均が30%、科研費の伸び率が143%、自己資金比率98%。本厚木駅前にはパチンコ店を改造した「厚木ステーションキャンパス」を置く (c)朝日新聞社

松蔭大学は収容定員充足率過去3年平均が30%、科研費の伸び率が143%、自己資金比率98%。本厚木駅前にはパチンコ店を改造した「厚木ステーションキャンパス」を置く (c)朝日新聞社

 全国の大学が「2018年問題」に戦々恐々としている。18歳人口はこの年を境に減り続けるとされ、文部科学省が「大学効率化」の方針を示したことで、すでに「定員割れ」している私立大学を中心に「閉校」の文字もちらつく。そこで本誌は、全国の私立大学のサバイバル能力の数値化を試みた。

 指標としたのは、「収容定員充足率の過去3年平均」「科研費の伸び率」「自己資金比率」だ。

「収容定員充足率」は学部全学年の合計定員に対する在学学生数の割合で、100%未満が「定員割れ」。収容定員充足率の過去3年の平均をとることで、「大学の安定的な学生を集める力」を見ることができる。「科研費の伸び率」では、大学や研究機関の研究に必要な資金を国が助成する「科学研究費」が16年度から17年度にかけてどれくらい増えたかを示した。これは大学の学術研究の質を測るバロメーターにもなる。「自己資金比率」は、大学経営の健全性を示すもの。16年3月末時点の大学の総資産に占める純資産の割合を示した。90%以上なら健全性が高く、75%を下回ると相対的に負債が多いと見ることができる。

収容定員充足率の低い順に50大学を並べると、圧倒的に地方。50大学のうち在京の大学は2校だけで、収容定員が千人以下の小規模大学が多く含まれた。2年連続で科研費がゼロという大学も散見される。ただ、収容定員充足率は低くても自己資金比率は高い水準を維持している大学も少なくない。その理由を駿台教育研究所進学情報事業部部長の石原賢一さんはこう話す。

「定員を減らすには煩雑な手続きが必要なので、定員割れでも経営を続ける体力がある大学は是正しないケースもある。系列の高校、中学で利益を上げている学校法人もあるので、定員割れイコール経営が危ないということではありません」

 とはいえ、収容定員充足率の「高低」を分けたものは何なのか。

 教育ジャーナリスト木村誠さんは言う。

「短大が共学化して4年制大学になった大都市郊外や地方の大学で、短大教育をそのまま延長したようなケースは、総じてうまくいっていない。就職先も広がっていない。地の利が悪いところはさらに苦しい」

 医療、福祉、看護など、地域に就職先があるかどうか、地元ニーズを満たすかどうかが大きいという。

「収容定員充足率」の3年平均が30%だった松蔭大学の前身は松蔭女子短期大学。00年に4年制の松蔭女子大学になり、04年に共学化して改称した。神奈川県と東京都に五つのキャンパスがあるが、メインの「厚木森の里キャンパス」は小田急線本厚木駅からバスで約20分。17年5月時点で、収容定員2172人に対して在籍学生数は674人だ。この状況について尋ねると、大学側はこう回答した。

「19年度募集から、学科廃止を含めて検討を行っている。借入金もなく自己資金比率は高いので、財務上の心配はない。科研費の取得額、取得率共に向上しています」(入試広報課)

 地方私立大学はどうすれば生き残れるのか。石原さんは、生き残る道は二つだという。

「有力私大の系列に入るか、地方の専門学校の需要を取り込むか。前者の場合は、WIN-WINになれるように財務基盤をしっかりと保っておくこと。後者の場合は、地元企業に就職できる専門性を獲得できる独自のカリキュラムを構築することが肝要です。ビジネス感覚を持った職員の養成も急務でしょう」

(編集部・作田裕史)

AERA 2017年11月27日号より抜粋


トップにもどる AERA記事一覧

続きを読む


このエントリーをはてなブックマークに追加