詐欺は被害者を誤信させたうえで不法に利益を得た場合に適用される。適化法は「偽りや不正の手段」によって国の補助金を受給した段階で適用される。適化法の法定刑は5年以下の懲役または100万円以下の罰金。詐欺だと10年以下の懲役と重くなる分、だれがどう利益を得たかを具体的に立証することが求められる。

 佐久間修・名古屋学院大学教授(刑法)は商工中金について、「不正受給したお金が『国の補助金』にあたれば、適化法違反にあたる可能性が高い」と話す。

 だが、経産省によると、危機対応の利子補給金や補償金は複数年度にまたがって使われるため、「出資金」として拠出していた。使途が明確で返すことがない点などで補助金と性格は変わらないが、法律上の「補助金」にはあたらないため、適化法違反に問われることは免れそうなのだという。

 元東京地検検事の落合洋司弁護士はこう語る。

「もらえないはずのお金を受け取っており、詐欺などが成立する可能性も十分ある。ただ、本来は『被害者』である国が被害を特定し、被害届を出したり告訴したりするのが筋。被害者の捜査協力を得られないと、捜査機関が動きにくい面もある」

 お金をだまし取られた側の国に刑事責任を問う意思はあるのか。経産省にきいてみると、中小企業庁金融課の担当者は「今はとくに議論はしていない。総合的に検討して判断するでしょう」と話すのだった。

 元経産官僚の岸博幸・慶應大学教授が言う。
「森友学園はアウトで商工中金がセーフでは、国民は納得しないのではないか。刑事責任を問う姿勢が国にないなら、経産省が元事務次官を歴代社長に送り込んだ天下り先をかばっていると思われても仕方ない」

(朝日新聞記者・藤田知也)

AERA 2017年11月20日号