不正融資問題の調査結果について、会見で説明する商工中金の安達健祐社長(左列中央)
不正融資問題の調査結果について、会見で説明する商工中金の安達健祐社長(左列中央)

 経理書類を改竄・自作し、国のお金をだまし取っていた政府系金融機関の商工組合中央金庫(商工中金)。国は刑事責任を問うべきだ。

 商工中金が自主調査の結果を公表した10月25日。元経済産業省事務次官の安達健祐社長が記者会見で神妙にこう語った。

「トップとして極めて重い責任があり、適切な時期に社長を退く。解体的出直しに全力で取り組むことで責任を果たし、可能な限り早く交代したい」

 悪用した制度は「危機対応業務」。急な景気変動で業績が悪化し資金繰りに困る中小企業に融資できるよう、国が利子の一部を補給し、焦げ付いても損失の8割を補償するものだ。

 2008年の制度開始以降、商工中金は計12兆円を融資し、国からもらった利子補給金は450億円、補償金は900億円に上る。

 だが、商工中金は基準に満たない企業にも経理資料を改竄・自作してじゃんじゃん融資していた。実績を上げて存在意義を示そうと、経営陣が過大なノルマを課したからだ。不正融資は2646億円分で職員444人が関与。疑わしい分も含め36億円を国に返還する。

 さらに驚くのは、経営幹部が主導する形で不正をもみ消していたことだ。14年末、不正が最も多かった池袋支店(東京)で経理資料の改竄などが多数発覚。報告を受けた経営幹部らは私文書偽造罪となるのを避けるため、改竄した顧客名義の資料を「商工中金作成の内部資料」と偽り、融資基準を満たさないものも満たすと「判定」。当時の副社長らの指揮のもと、コンプライアンス統括室、監査部、組織金融部などの中枢部門が総出でウソの報告書を作って国に提出していたのだ。

 ウソの資料で国のお金をだまし取る行為は、学校法人「森友学園」による国の補助金不正受給事件にも通じる。

 前理事長の籠池泰典被告らは工事費などを水増しした契約書で5644万円の補助金をだまし取ったとして、詐欺罪で起訴された。捜査段階では、補助金適正化法(適化法)違反での立件も検討されていたとされる。

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