田中美穂「『南方熊楠随筆集』との出会いは古本屋の仕事につながる大きなもの」 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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田中美穂「『南方熊楠随筆集』との出会いは古本屋の仕事につながる大きなもの」

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古本屋「蟲文庫」店主・田中美穂さんの読書遍歴は?(※写真はイメージ)

古本屋「蟲文庫」店主・田中美穂さんの読書遍歴は?(※写真はイメージ)

 子どもの頃読んで忘れられない本、学生時代に影響を受けた本、社会人として共鳴した本……。本との出会い・つきあい方は人それぞれ。各界で活躍する方々に、自身の人生の読書遍歴を振り返っていただくAERAの「読書days」。今回は、古本屋「蟲文庫」店主の田中美穂さんです。

*  *  *
 高校では生物部に入っていた。主なテーマは粘菌(変形菌)。顧問の先生が研究者だったのだ。日曜日になると部員たちと山の中の朽ち木や落ち葉に生えている粘菌を探し、放課後にはその収穫物を顕微鏡と図鑑とを交互に見比べながら分類していく。

 その部室の本棚にあったのが『南方熊楠随筆集』だった。先生から「くまぐすいう人がおってなあ」と聞かされ、日本にも昔からこんなことをしている人がいたのだ、と興味を持った。当時は日本語による本格的な粘菌の図鑑はまだ出されておらず、英国の粘菌学者リスター女史によって書かれた洋書の図鑑だけが頼りだったため、感慨もひとしおだった。この随筆集に粘菌のことはそれほど書かれていないのだが、ともあれ、その縦横無尽に繰り広げられる博学卓識ぶりに圧倒され、また憧れもした。

 この出会いは、現在の古本屋の仕事やライフワークであるコケの観察を続けるうえでも大きなものとなった。(続)

AERA 2017年11月13日号


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