独自コンテンツの発信では、「短尺縦型」と呼ばれるメディアも熱い。「短」い「尺」にまとめた、スマホのひっくり返し不要の「縦型」動画のこと。老舗C CHANNELは、ヘアやネイルのハウツー1分動画で、日本のみならずアジア10カ国に2100万人のファンがいる。広報・宣伝チームの浜内久乃さんは言う。

「創業当初はインフルエンサーなど若い女性による動画ブログでしたが、料理のカテゴリーでハウツーに徹した動画を配信し始めると再生回数が向上。米国のレシピサイトと提携して英語圏で料理動画配信を始めたところ手応えがあり、ハウツー動画が英語圏や中国でも人気であることから集中を決めました」

 短尺のメリットは、ちょっとした時間で、文字よりわかりやすい情報が手に入れられること。音声なしでも楽しめるコンテンツが多いため、電車の中でもイヤホン不要。日本のトレンドをチェックしたい、アジアなど非日本語圏のユーザーも呼び込みやすいのだろう。

 それでも、大ヒットドラマの再生回数でさえ1話数百万回。単純に人口で計算すると、視聴率は数%程度で、1兆8千億円とされるテレビ広告の市場規模に比べると、ネット動画のそれは数パーセントに過ぎないともされる。

「活字と比べて、やんちゃなメディアを自認していたテレビも、やんちゃさではネットの動画にかなわない。ドラマづくりや報道など、硬派な分野に注力しなければ、あっという間に新しいメディアに勢いで負けてしまうでしょうね」(前出の堺さん)

 動画メディアのオーシャンは、まだ青い。(ライター・福光恵)

AERA 2017年11月13日号より抜粋