そして現政権は“フランコの再来”を感じさせてもいる。リーマン・ショック後の2011年に就任したラホイ首相は、経済危機を理由に州権限を抑えて中央に一元化する方針を表明。バルセロナ近郊で生まれ育ったカタルーニャ人男性(88)は言う。

「フランコ時代、私たちは犬のように扱われた。自治を奪おうとするラホイはフランコだ」

 この危機感がカタルーニャの抵抗の精神に火をつけた。同じ自治州のバスクには認められている徴税権がカタルーニャにはない、という不公平感も機運を後押し。州内の世論調査で15~20%台だった独立支持は14年には49%に急増した。

 カタルーニャの政治家は、この空気を無視できない。一方、汚職事件にまみれ、国民の支持を失っていたラホイ政権も首をつなぐため強気の姿勢を崩せなかった、というわけだ。

 こんな政治家のチキンレースがもたらしたのは分断だ。スペインでは今、カタルーニャの企業や製品のボイコット運動がSNSを通じて拡散。カタルーニャ内にも亀裂が広がる。バルセロナの大学生サンドラ・カストロさん(18)は「友人同士でも独立か反独立かで対立し、話さなくなった。意見が違うとフェイスブックで友だちから外されてしまう」と寂しそうだ。
 
10月31日、ベルギーで開いた記者会見で事実上の「亡命政府」を宣言したプッチダモン氏。数日前にみえた顔の疲れは消え、明るさが戻っていた。12月21日には州議会選挙もある。世論調査では独立派と反独立派が拮抗。だが、どちらが勝っても分断の傷は癒えそうもない。(朝日新聞国際報道部・岡田玄)

AERA 2017年11月13日号