東海中学・高校/来年2月に開かれる第32回サタデープログラムに向けて、生徒実行委員長の中山瑛紀さん(高1)らがミーティング(撮影/写真部・小原雄輝)
東海中学・高校/来年2月に開かれる第32回サタデープログラムに向けて、生徒実行委員長の中山瑛紀さん(高1)らがミーティング(撮影/写真部・小原雄輝)

 地域でも進学校として知られる東海中学・高校では、生徒が主体なってつくり上げる学校行事がある。そこでの成功・失敗体験が、後の人生を「変えた」と話す人も多いという。

「いよいよ当日となりました」

 そんなメッセージ入りのA3用紙に、中高生あわせて100人を超える実行委員たちの、10分刻みのスケジュールがびっしり書き込まれていた。講師のアテンドや来場者の案内、機材トラブル補助など、すべての実行委員が丸一日、効率よく任務をこなしたことがよくわかる。

 この紙は、名古屋市にある東海中学・高校が毎年2回開いている公開市民講座「サタデープログラム」の「実行委員動静表」。講師の選定から、出演交渉、広報、会場運営など、すべて生徒たちが手がけ、その数、約50講座。市民に公開され、延べ3千~5千人を集める。

 講師は、実行委員がそれぞれ自由に選んで出演を交渉する。基準は「自分が会いたい」人。学者や政治家、アーティストなどジャンルも多岐にわたる。

 東海中高は、仏教精神に基づく教育でも知られる1888年創立の男子校。地域の秀才が集結する地域ナンバーワン進学校だ。同時に来校者1万人規模の文化祭や、そこから誕生した男子中高生が宝塚風歌劇団に挑戦する「カヅラカタ歌劇団」の公演、そしてこの「サタデープログラム」でも、地域にその名をとどろかせている。2002年の立ち上げ当初から顧問教員を務める久田光政さんは言う。

「生徒にとっては、成功体験はもちろん、普段経験することができない失敗体験も貴重です」

 実行委員だったOBも、この活動がその後の人生を「変えた」とする声が多い。

 東海中高から早大卒業後、大手コンサルティングファームに勤務する元実行委員(24)は「中高の多感な時期に一流の方々と間近で接することができたことは大きい。生き方の軸を考えるきっかけになった」という。

 競争からこぼれ落ちそうな生徒の手もつかんで、離さない。

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