例えば、メドレー社が提供するシステムは、都市部の診療所を中心に600を超える医療機関が導入。内科や精神科、小児科、皮膚科などが多いという。代表取締役で医師の豊田剛一郎さん(33)は言う。

「触診や検査、点滴が必要な急性期の病気やけがには向きませんが、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの慢性期で状態が安定しているケースではメリットが大きい。通院が負担で治療を中断し、悪化させてしまうという事態を防ぐことができます」

 他に勃起不全やアトピー性皮膚炎、花粉症、禁煙治療なども遠隔診療に適している。子育て世代のニーズも高い。3歳と1歳の男児の母親はこう話す。

「以前は、アトピー性皮膚炎の長男の薬を処方してもらうために受診するたび、一緒に行った次男が風邪をもらっていました。遠隔診療に切り替えてからはそれがなくなった。私自身もピルの処方で利用しています」

「会わないこと」が受診のハードルを下げる場合もある。

 精神科領域で遠隔診療を導入する新六本木クリニック(東京都港区)の院長、来田誠医師(37)はこう打ち明ける。

「引きこもっていて受診拒否のお子さんが、スマホを通してなら診察に応じるケースも多い」

 もちろん、対面診療が基本。検査が必要なときや、社会復帰に向けて積極的に外出してほしいときなどは、対面を勧める。来田(きただ)医師は言う。

「状況に応じて、対面と遠隔診療を組み合わせることが大事」

 政府は、18年度の診療報酬改定で遠隔診療を評価する方針を表明している。(ライター・谷わこ)

AERA 2017年10月30日号