パソコン画面を通して診察する新六本木クリニックの来田医師。対面診療ではわからない生活の状況が垣間見え、タイムリーにアドバイスできることもある(撮影/ライター・熊谷わこ)
パソコン画面を通して診察する新六本木クリニックの来田医師。対面診療ではわからない生活の状況が垣間見え、タイムリーにアドバイスできることもある(撮影/ライター・熊谷わこ)

 約束の時間は午後1時。勤務先の誰もいない会議室で、40代の男性のスマートフォンが鳴った。画面に映し出されたのは主治医の顔。「前回の診察以降、どうですか」という言葉で、診察が始まった。

 薄毛に悩む男性は3週間に1度、医師の診察を受けている。場所が病院の診察室ではなく会社の会議室だというだけで、診察の内容は通常と変わらない。「薬を飲んで不具合はありませんか」などの質問に男性が答えるやりとりが10分ほど続き、「前回と同じ薬の処方箋を郵送します。また3週間後に」という医師の言葉で診察は終了した。

 初診と2度目の診察の際は男性がクリニックを訪ねたが、「男性型脱毛症」と診断がつき、今後は内服薬の処方が中心になるというところで、男性がオンライン診療を希望したという。

「通院や待ち時間がないので楽。薄毛の治療なので、人に会わずに済むのも助かります」

 スマホやパソコンを使って自宅や職場で医師の診察を受ける「遠隔診療」は、これまで離島や僻地(へきち)に暮らす患者が主な対象とされてきた。それがいま、都市部でも広がりつつある。

 きっかけとなったのは、2015年8月に厚生労働省が出した「離島や僻地に限定しない」という通達。その後、遠隔診療のシステムを開発して医療機関に提供する企業が相次いでいる。公的保険の適用を受ける場合、初診は対面診療が原則。対面で診察後に医師が可能と判断すれば、遠隔診療に切り替える。処方箋は郵送され、薬は近所の薬局で受け取る。費用の支払いはクレジットカードだ。

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