北朝鮮は拉致問題がアメリカの大きな関心のもとにあることを理解したのではないでしょうか。日本は、北朝鮮との交渉の中で拉致被害者を全員帰せ、帰せば一定の見返りを出すが帰さない場合は何もないと、それぐらい強いメッセージを送るべきです。そこに解決の糸口が見えてきます。

──具体的にどのような見返りが有効でしょう。

 北朝鮮は経済的にも外交的にも追い詰められています。現状で北朝鮮が一番ほしがっているのは現金です。しかし、そのような経済的見返りは核やミサイル開発に回される可能性があるのでダメです。次に北朝鮮がほしいのは何か。電力と観光面でのインフラです。北朝鮮の深刻な電力不足を改善するために、軍事転用されない発電所や技術を提供することは可能です。観光面でのインフラでは、例えば金正恩委員長の指示で13年にオープンした北朝鮮南東部の馬息嶺(マシンリョン)スキー場は総延長110キロもある巨大なものですが、400人規模のホテルが一つあるだけ。スキー場へ向かう道路も整備されていません。こうした分野で日本が協力するのであれば、国際社会からも理解されると思います。(構成 編集部・野村昌二)

AERA 2017年10月23日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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